もともと趙昂の子の趙月は馬超に付き従い副将となっていた。
趙昂は（楊阜らの計画に）応じたものの、家へ帰った後に妻の王氏に相談して言うには、
「私は今日、姜叙・楊阜・尹奉たちと共に協議し、韋康殿の仇を討とうと誓った。
ただ、我が子趙月は馬超に仕えており、今もし兵を興したなら馬超はきっと我が子を殺すだろう、どうしたらいい？」
その妻が声を荒げて言うには
「君父の大恥をそそぐのに、わが身を失っても惜しくはありません、まして一人の子がなんだと言うのです？
あなたがもし子を顧みて（馬超に抵抗することが）できないのなら、私が先に死にましょう。」
こうして趙昂は（楊阜らの計画を実行することを）決断した。次の日に一同は兵を起こし、姜叙・楊阜は歴城に、尹奉と趙昂は祁山に陣を敷いた。
王氏は装飾品や絹の衣類をすべて持って自ら祁山の陣中に赴き、兵士たちに（自分が持つ高価な品物で）褒賞を与えてねぎらい、皆を励ました。
馬超は姜叙・楊阜が尹奉・趙昂と会合し、事を起こしたと聞くと大変に怒り、すぐさま趙月を斬った。
　　　　中略
（馬超が歴城を攻め）馬超らは南門より入り、城中の民衆をことごとく斬った。姜叙の家へ入ると、老母を捕えた。
（姜叙の）母は少しも（馬超を）恐れず、馬超に指をさして大いに罵った。馬超は激怒し、自ら剣を取ってこれを殺した。
尹奉・趙昂の家族も老若を問わず馬超に殺された。趙昂の妻の王氏だけは陣中に居たため、難を逃れた。